子どもの頃から慣れ親しんだ学校名が、甲子園で大旋風を巻き起こしていた。

 

 漫画のような大逆転劇続きで決勝まで進出した。夏休みの話題を独占、NHKでさえ大阪桐蔭を特集したりはしなかった。

 

 誰がいったか知らないが、平成最後の百姓一揆。

 

 佐々木希の黒歴史こと秋田県立金足農業高校は、全校生徒500人。干拓で有名な八郎潟(大潟村)のすぐ南。学校付近の駅周辺を除いて、少し歩けば見渡す限りの田園地帯だ。

 

 野球部員は出場校中下から2番目の48人。全員が近隣の公立中学出身だった。

 

 品のいい花屋のカーネーションのような、慶応か東大かプロスポーツかでコースが分かれる都会の私立高校生とは対照的に、彼らはあぜ道に生えるド田舎の雑草だった。

 

 結局は、雑草らしくボロボロに踏みつぶされ、閉会式で涙を流す球児たちは、どこか間延びしてお人好しな、典型的な秋田顔ばかりだった。

 

 うちの嫁が「カッコいい」と熱をあげていた吉田投手でさえ、秋田によくいる男前だった。

 

 帰省するとあちこちで出くわすそのあか抜けない顔立ちに、秋田育ちの稲造には、彼らがとても他人には思えなかった。

 

 私のアイデンティティーは、やっぱりあそこにあるのだ。

 

 なお、弊社取り扱いの「つや姫」は、金農からわずか800mほど離れた水田で、OBが生産したお米である。