1週間だけもらった育児休業中、私はずっと家事をしていた。
誰かのために家事をするというのは、正直初めての経験だった。
妻の仕事は、母乳と体をとにかく休めること。
産後の疲れの中、母乳=血液がどんどん出ていくのだから、普段どおりにしているとゲッソリしていく。
だから、必要以上に食べることも仕事。母乳を通しての赤ちゃんへの影響も大きいから、栄養面はもちろん、安全性を特に考えて。
農薬や化学肥料をあたりまえに使った農作物、遺伝子組み換え、加工食品は避けたい。
家事といっても、おしめとお風呂、1日1度の掃除や洗濯はそれほど苦ではない。
大変なのは3度の食事。デフレ社会では買った方がなんでも安いが、自炊の方が間違いなく安全かつ栄養バランスに富む。
ところが、男の料理なんてもともとレパートリーが少ないうえに、肉や野菜の切り方が雑。味付けも繊細さに欠ける。
しかも面倒がって同じような具材ばかり使う。いきなり1日30品目が目標といわれても、難しいように思えた。
…といっても、雑誌、クラシル、クックパッドを参考にしながら、稲造米の胚芽精米に黒米を混ぜた栄養満点ご飯に、みそ汁とおかず2品を目標に、1日3食作ってきた。
新生児と妻と自分の、たった3人でも大変だった。
これが、家事を手伝わない夫に子ども2,3人の家事を一手引き受けているお母さんがいたら、まさに超人的な仕事量なのではないかと思った。
しかも昼はパートなんかしていたりしたら、いったいどうやって回しているのだろう。
その半端ない仕事量をこなす多くのお母さんたちには、頭が上がらなくなる。
付き合いと称して一杯ひっかけて帰ってくる、しかも「俺の稼ぎで飲んでるんだ」みたいに居直る夫など、場外乱闘よろしくパイプ椅子攻撃でもしたくなるだろう。
こういう、「自分だけ苦労しているんだ」みたいな夫には、ぜひとも一度、主夫業を経験させるべき。
洗濯機は回しっぱなし、子どもが遊び散らかした後を片付け、お弁当含め3食作らねばならぬ。人によってはパートまでこなし、しかも、PTAなど煩わしい付き合いまである。
そもそも、限られた収入(予算)の中で、貯蓄もしつつ「飽きさせない献立」を考え続けるのは、やりくりするだけの創意工夫と強固な意志があらねばならぬ。
生活上手の主婦は、ある意味「株式会社〇〇家」の辣腕(らつわん)経営者でもあるのだ。父ちゃんは出資者で、母ちゃんが社長という関係。
でも、子どもへの愛だけは無償だからこそ、年中無休の報酬なしでもやっていける。
たった1週間の育児休業であったが、そんな母の大変さと幸せが少しはわかった稲造であった。
駐在員は子育て世代。
父ちゃん、ぜひとも1か月くらいの育休取得をおすすめする。
仕事は忙しいし、飲み歩きたいし、上司次第でとりにくいかとは思うが、なんとしても仕事に目途をつけ、取得するべき。
家族あっての自分。福利厚生だと割り切って、雇用側もそれを理解するべき。私が社長なら絶対取らせる。
妻や母に対する価値観がまったく変わる。感謝の気持ちが膨らみ、母には孝行したくなり、妻に自然に頭が上がらなくなる。
父ちゃんがそういう気持ちの家庭は、きっとうまくいくのだと思う。