だるさは鉄分不足

 貧血とは、集会で倒れる柳腰の少女のものばかりかと思っていた。が、倒れなくても「貧血」と呼ばれる症状に悩む人は多いらしい。

 

 本来の貧血は、「脚気(かっけ)」とよく似ている。大航海時代の船員や白米を食べ始めた大名や公家、さらには兵糧に白米を用いた日露戦争の兵隊が、この脚気に苦しめられた。

 

慢性的なけだるさが主な症状で、ひどい場合だと死んでしまう。貧血の場合、さらに爪の変形、不眠、肌荒れ、嚥下障害などなどがあらわれる。

 

脚気はビタミンB1の不足による糖質代謝の異常によって起こる。が、貧血は主に鉄分不足から引き起こされる。

 

赤血球は鉄に酸素をくっつけて、ミトコンドリアまで運搬する。しかし、赤血球が十分に鉄分を保持していないと、もっていくべき酸素を吸着できないのだ。

 

ミトコンドリアは酸欠状態に陥り、細胞が機能しなくなる。それが「だるさ」となって症状として表れる。

 

脚気は代謝異常から細胞がエネルギーを取り入れられないことで起こるし、貧血はミトコンドリアが酸素を摂取できないことで起こる。

 

ビタミンB1は玄米に多く含まれているが、鉄分を多く含むのは肉の赤身やレバー、葉物野菜にシジミや大豆類などなど。成人1日の推奨量は1mgであるが、吸収率は1~2割程度と効率が悪い。

 

だから、11020mg摂取する必要がある。

 

現在の平均的日本人は18mg程度の鉄分を摂取しているそうだが、吸収率を考慮すれば、実際の摂取量は0.8mgと推奨量を下回る。

 

高度成長期の生活が今ほど便利ではなかった頃、日本人が一人当たり13mgの鉄分を摂取していたのは、調理器具の多くが鉄製だったためといわれている。

 

それが、80年代からステンレスやテフロン加工の調理器具が幅を利かせるようになり、日本人はその普及率に比例して鉄分不足に陥ってしまった。

 

そういえば、稲造の幼少期、実家には南部鉄瓶があったし、フライパンも鉄製だったような気がする。ガス釜も重たい鉄製だったようだし(昔のかまど式は鉄羽釜)、鉄は台所にあふれていた。

 

「鉄卵」といって、その字の通り卵型の鉄を鍋に入れて、一緒に煮ていたこともあったと記憶している。

 

中年になってみて、だるさ、肌荒れ、口内炎、抜け毛、不眠、はたまた嚥下障害が気になる方は、ビタミンB1不足の脚気もそうだが、鉄分不足も極めて濃厚。

 

鉄分を意識した食生活(最低110mg以上!)のほかに、調理器具に鉄を使うようにしてみると、鉄欠乏性貧血は改善するとのこと。

 

シンガポールだからこそ、みそ汁なども中華鍋で作ってみてもいいかもしれない。

 

...というような内容が、NHKの「ガッテン!」でやっていた。

 

 

しかし、弥生時代~昭和初期までの日本人の食生活といえば

 

鉄の羽釜で炊いて玄米ご飯に一汁一菜のみの質素なもの。

 

鉄なべで炊いたみそ汁、豆腐や納豆の豆類、菜物・根菜の無農薬野菜類に、ひじきなどの海藻、動物性たんぱく質として、魚貝類。

 

貨幣経済が未発達の時代、税金を米で納めさせるため、権力者は「宗教的禁忌」であると、四足動物の殺生を禁じた。

 

(鶏肉や卵、あるいは「やまくじら」の猪肉は、病気の際の滋養強壮剤として食べていた)

 

推奨量的には、肉食が原則禁止だったからたんぱく質が足りていないとはいえ、ビタミン・ミネラルにはあふれていた。

 

凶作や戦時の飢饉時をのぞき、脚気や貧血とは無縁の食生活。ある意味、鉄欠乏性貧血はアレルギーと同じく、現代病なのだ。

 

現代人の多くが、ビタミン・ミネラルが不足気味。安物の化学合成サプリメントではほとんど補えていないから、安物買いの銭失いでしかない。

 

定年がなくなり、寿命も90歳に近づく。「健康に長生きしたい」という人が、収入や気持ちに余裕のある人を中心に増えている。

 

 

フィットネスブームの次は、鉄釜鉄鍋で、玄米ご飯やみそ汁を作る、という食生活の回帰が始まるような気もする。