秋、農家から集荷される時点で、玄米はランク付けされる。
まず、1等、2等、3等、規格外と、国家資格を持った検査員が、見た目などで4段階に分類する。もちろん、等級の落ちるものほど、低価格になる。
玄米の見た目と味は必ずしも直結しない。しかし、全体の形が整い、美しい玄米ほど(「整粒歩合のいい米」という)、米が砕けにくく、きれいに精米できる。皮をむいてしまえばみんな一緒の野菜とは、ここが決定的にちがう。
「粒ぞろい」だから食感がいい。食感がよければ、舌は「おいしい」と感じる。
グルメ漫画「美味しんぼ」の中で、海原雄山の食べるごはんは、使用人に1粒1粒のサイズを選別させていた。漫画の世界の話ではなく、実際にこれをやると、本当にお米がかなりおいしくなる。だから、「大粒」で、しかも「粒ぞろい」であることが大事になる。
さて、収穫された稲は脱穀されてワラとモミに分類される。モミから玄米を取り出して袋詰めし、冷暗倉庫で保管する。スーパー店頭への出荷や、注文を受けてお客さんに配達する段階で、これを白米へと精米する。
見た目は1等、2等…で公的検査を受けるが、実は、玄米は大きさで分類されている。玄米の横幅1.75㎜(S)、1.8㎜(M)、1.85㎜(L)、1.9㎜(XL)、それぞれのサイズの網の上に玄米を通し、農家さんでは規格サイズ以上のものだけを農協や集荷業者に収める。それ以下は、野菜でいえば小さくて不ぞろいなために出荷できない「中米」、あるいは「くず米」といって、半値かそれ以下で取引される。
魚や野菜でも、規格以下のサイズは市場に出さないが、実は米もそれと同じ。
ただ、この玄米サイズの規格は、地方によってかなり異なる。私の知る限り、秋田はXLサイズが基本となるが、関東地方はLサイズが基本とのこと。たったの0.05㎜だが、見た目はかなり違ってくる。寒暖差など生産段階の環境的要因でもそうだが、収穫後の選別段階においても、関東米は東北米に負けている。
つまり、お米の場合は、1等米規格で、さらに粒のサイズが一番大きい1.9ミリサイズが、選び抜かれた「お米のエリート」になる。こういう米は見た目もいいし、粒ぞろいで食感も良好。
ごはんの食味は、
1.品種
2.産地
3.玄米規格
4.水
5.炊飯器
の5要素によって決まる。
あと、生産年度。古米や古古米の混入した複数年数産、複数品種が混じった複数原料産と、米の袋を見るとこれは書いている。固めの古米が好きな人もいれば、実はブレンドしたほうが食味がアップする場合もある。
ただし、米袋には「1等米」「1.9㎜」といったところまでは書いていない。ブランド米であるコシヒカリやあきたこまちでも、1袋1500円くらいの安物から2500円以上もする高級品まであるが、妙に安いものは、品種はあきたこまちやコシヒカリでも、まちがいなく格落ち2等以下だったり、サイズが小さい「中米」が多量に含まれている。
2500円以上のものは、ブランド品種で、さらに全量1等玄米、XLの粒ぞろいであるとみていい。こういう米はうまい。毎日食べるご飯だからこそ、「そこそこ食べられる」よりも、「おいしい」と感じるほうがいいに決まっている。1500円と2500円では1000円の価格差はあるが、1日当たりなら、1膳当たりなら知れたもの。
肉や野菜は「中国産じゃないか」「賞味期限はいつか」「見た目はどうか」などと目の色を変えて吟味されるのに、米はなぜか値段とブランドでしか選ばれない傾向が強い。だから、「魚沼産コシヒカリ」のように、生産量より流通量が圧倒的に多い、パチもんが横行闊歩する。
流通コストが日本の4-8倍近くかかるシンガポールにくると、なぜ魚沼産が日本価格かそれ以下で出回っているのだろう?なぜそれを疑いもせずに買う人がいるのだろう?
品種、産地、生産年度、精米日…とよく見て買えば、日本ではおいしいお米を見つけることができる。ドラッグストアで売っているお米や、税抜きで5キロ1500円くらいの、一見、米屋からすれば全然利益が出ていないようなお米は、いろいろ混じっている。