同県内であっても、生産場所によってお米の評価はずいぶん異なる。 お米の名産地は日本海側に集中している。ただし、北は秋田から南は福井まで、東北から北陸の日本海側、かつ内陸部で豪雪地帯のお米が、日本これすなわち世界一の米作地帯。太平洋工業ベルトに対抗して、日本海ライスベルトと名づける。 見渡す限りの平野部で黄金色の波がゆれている。それが「米どころ」というイメージ。しかし、平野部は川の下流域で、それだけ生活排水が流れ込んで水がきれいとはいえない。天然ミネラルよりも人工ミネラルの方が多そう。水の流れが悪い溜池や湖沼の水で作っているようなところもよくない。 山から染み出す養分を運ぶのが豪雪地帯の雪どけ水なら、下流域は水そのものにミネラルが乏しく、水不足に陥りやすく取水が滞る場合がある。当然生育に問題が出る。 また、平野部は寒暖差が山間部に比べて少ない。そのため、穂が形成される時期(登熟期)に良質な糖分が穂に行き渡らず、山間部のお米に比べて一般的に食味が劣る。昼夜の寒暖差が激しい盆地ではあまーい果樹の栽培が盛んであるが、その理屈と同じ。要するに、北国山間部の盆地の米はうまいのである。 あとは土質。土質は同じ町内でも、そして同じ農家の水田内でもずいぶんと異なる。山沿い豪雪地帯にある名産地の土は、全般的に養分豊富である。 おとなの社会科授業を兼ねて、その米がどの県のどの地方から来たのかを知っておいても損はない。 1.日本海側の山沿いの豪雪地帯 2.寒暖差の激しい山脈沿いの盆地 3.絶えることのない豊富な雪どけ水 4.土壌が豊か こういうところのお米は、シンガポールでは決して安くはない米代を払って食べる価値があると判断していい。 秋田なら奥羽山脈沿いの横手盆地、山形は庄内地方、新潟は長野・福島県境の魚沼、富山・石川・福井の北陸は北アルプスの麓。このへんが世界的なお米の名産地・日本海ライスベルトに属している。農水省や観光庁は、四季折々の日本の美しい自然とともに、このへんをもっと世界にPRしてもいい。 「新潟コシヒカリ」といえば聞こえはいいが、そういうわけで海沿いの米は評価が高くない。「秋田あきたこまち」もしかり。 他にコシヒカリの名産地は、福島の会津、栃木、長野、そして三重なら忍者の里の伊賀上野。みんな浜風恋しい内陸部の豪雪地帯。その他地域のコシヒカリはただのコシヒカリなのである。 お米の産地は、「○○県産」という大くくりではなく、「○○県△△産」という地方名まで入ったものが望ましい。三重県産コシヒカリではなく、三重県伊賀産コシヒカリに価値がある。 石川・富山の県境付近からコシヒカリを輸入する予定がある。北アルプスの天然水で作った豪雪地帯のコシヒカリ、想像しただけでおいしそうではないですか!? 普通に考えたら、利根川下流域から採取した水道水より、アルプス麓の針葉樹林の地下から採取したミネラルウオーターの方が体にいい。 日本から輸入されたお米をシンガポールで食べる。それはすなわち、その産地の水を飲んでいるのと、まったく同じことである。だから、高いお金を払って日本のお米を食べるなら、同じ値段ならできるだけ水の美しい産地のお米を選んだほうが、体にも圧倒的にいいのである。 健康志向の人は覚えておいていいと思う。