幸か不幸か、シンガポールの病院へ行ったことはまだない。
聞いたところによると、看護婦のほとんどはフィリピンからの出稼ぎ看護婦らしく、看護助手は15,6歳の少女ばかりだという。
フィリピン人メイドは、メイド文化華やかなりし格差社会の香港・シンガポールにはたくさんいる。
シンガポールの中心街に「ラッキープラザ」というショッピングセンターがある。休日にここに足を踏み入れると、英語がほとんど聞こえてこず、老若のフィリピン人女性が溢れんばかりにこの建物内に集まっている。
なぜラッキープラザがフィリピン人女性のたまり場になっているのかは不明であるが、あの異様な光景を目にした瞬間、多少なりともカルチャーショックを受けた。年齢的に見て、多くのフィリピン人女性が故郷に旦那と子供を残して、国境を越えてはるばるやってきたわけである。
なぜフィリピン人が多いのか。理由は大きく分けて2つある。
まず、フィリピンの公用語が英語であること。これはかなり大きい。医療訓練を受けていて、さらに言葉が通じれば世界中で即戦力。医療現場のスタッフは、日本のみならずなぜかどの国でもかなり不足している。国境を越えて人材を集めなければならず、ビザの発給もかなり容易だ。アメリカは、公用語が英語のインドとフィリピンからの医療関係者が多いと聞く。
これはニュージーランドでも同じだった。大病院へ行くと、フィリピンからの看護婦がいることいること。あの国は医者自体もエジプトやインドからの移民が多い。なお、こういった知的階級の移民は、建設労働者のインドイスラム系とはほとんど別人種のような、教養に満ち溢れた顔つきをしているから、階級社会の現実を目の当たりにするのであった。
フィリピン第二の理由は、フィリピン自体が、人材輸出を国家産業としていること。建設等単純労働の男性ではなく、医療現場や教育といった知的労働からメイドまで。通じる言葉を話せるということは、フィリピンにとって大きなメリットになっているようだ。
フィリピン英語は、半分中国語で聞き取りにくさ抜群のシングリッシュとは大きく異なり、世界的に見てもかなり綺麗な英語であるらしい。インドと並んで、コールセンターはフィリピンに集まっているというし、語学研修も他の先進国とは比較にならないほど安上がりで、そのためにフィリピンに行く人がいるほど。
つい最近まで、嫁不足に悩む秋田県の農村部も、フィリピンから嫁さんを連れてきていた。ったく、どの闇ブローカーがどういう手でつれてきたんだか。その国際結婚がうまくいったかどうかはよく分からないけれど、秋田で英会話教室を開いている人がいたりして、ロシア人や中国人女性とよりはうまくいっているみたい。フィリピン人女性は本質的に我慢強く、根も明るく、その国に馴染んでしまう性質があるのだろう。
20年ほど前、ど田舎秋田県にさえも水商売のフィリピン人女性がたくさんいたけど、今は全く見ることがない。東京や大阪にいるのかもよく分からない。
ともあれ、シンガポールには出稼ぎフィリピン人女性がたくさんいる。職業はメイドと看護婦が主で、休みの日は、なぜかオーチャードのラッキープラザでだべっているという話。