シンガポールでは6人の1人がミリオネアといわれているが、それはまったくの嘘である。どこからこういう話が出てきたのだろう。
個人資産がミリオン級というのは、おそらく家と車を足してのこと。現金や有価証券をそれだけ持っているわけではない。実際、家と車を無理なローンで購入して、その資産価値が近年のバブルでドワッと値上がりしただけの話で、庶民が現金をジャブジャブもっているわけではない。
現金や有価証券を100万ドル以上所有する人は、おそらく上位5-10%以内なのではあるまいか。いや、電車やバスに乗っていると、とても20人に1人がそんな金持ちとは絶対思えないから、いわゆる富裕層と呼ばれる人々は、上位1,2%以内だとは思う。
国民の多くはHDBという公団住宅に住んでいる。結婚すると、3,4LDKの団地を3,4000万円ほどで購入する。同じ金額を払えば、おそらく日本ではもっと立派なマンションを買えるはずだから、やっぱりシンガポールの不動産価格は高額だ。
コンドミニアムというジムやプールのついた高級マンションを購入する場合は、その倍以上はするようだ。
今年は価格が10%以上下落するとの予想もあるし、HDBも作りすぎてあまっているとも聞く。ようやくまともな資産価値が形成されていくのだろうか。
それに車。東京23区と同じくらいの面積に520万人だから、東京の人口密度よりは全然少ない。しかし、車のほとんどは島内で乗り回される。日本は都外にバンバン出て行くから流動性が激しいわけで。
日本のように、基本的には誰でも車を持てる状況になると大変だということで、車を持つためには500万円近い納税をしなければならない。この「車を持つ権利」というのは、オークションで買うらしい。需要があればもっと高くなるし、一時期は300万円くらいまで下落していた。
また、車そのものも高い。日本ではデミオやフィットといった1300CCクラスの小型車でも、600万円以上するという。日本ならただみたいな10年落ちの中古車でさえ、100万円はする。それだけの値段で売れているというより、それだけ税金を払う必要がある。
シンガポールの所得税は安い。だからタックスヘイブンと呼ばれて、金持ちが移民する国としても世界的に知られている。ただし、それは本当に大金持ちにとってタックスヘイブンなだけであって、フィットに1千万円以上払って乗らなければならない人には、かなりの重税といえる。
車とHDBやコンドミニアムを所有している人はそれだけの資産を持つわけであるが、無理なローンで買っている人も少なくないだろうし、所得税率は低いものの、給与の20%は社会保険料として納付する必要がある。日本は14%くらいだったはず。だから、国民の貯蓄率は低いし、ローンや借金のせいで可処分所得もそれほど多くないというのが現実。
一番おいしいのが、外国資本に雇用されている外国人労働者。部屋代は会社もち、車は会社所有、所得税率は10%以下となったら、私ならもう本国に帰るのが馬鹿らしくなる。東京は通勤時間は満員電車で1時間超、住宅補助は年々低下、んでもって車も自己所有に駐車代は馬鹿高いで、所得税、住民税、上昇一途の社会保険料…ともはや比べるべくもない。
そんなわけで、優雅なシンガポール滞在期間中は、稲造米穀店をよろしくお願いします。