コメのしあわせぶとり

コメのしあわせぶとり

 

 

 ニュージーランドにいた時、主食はその土地の人間同様、肉であった。コメも食べたが、カロリーベースで考えれば、おそらく6割以上は肉によって、肉体のエネルギー要求は満たされていたに違いない。

 

 つまり、通常のアジア人よりも、西洋人同様にたんぱく質を浴びるほど摂取していたわけである。コメも豪州米を中心に食していたわけであるが、日本米になれた贅沢な舌には合わず、まして炊きあがりも黄色く、時間がたてばバリバリになる外国産米のこと、「安けりゃなんでもいいや」と、腹に詰め込むだけで、それほどご飯は進まなかった。

 

 帰国して、まず驚いたのが、実家で見た日本米の炊きあがりの白さだった。日本のスーパーで販売されるそのほとんどは、産地や年度別ごちゃまぜのブレンド米といわれているが、食味検定器にかけての高品質ブレンドであるから、やはり大概は美味い。外国の最高級米よりも、日本の最低級米の方が美味い。

 

 日本は肉が西洋諸国に比べて高額であるため、どうしても同カロリーであっても、安価なご飯の割合が多くなる。コメの主成分は炭水化物であって、それは体内で糖分に分解される。「炭水化物ダイエット」とはよく聞くが、どうやらその、たんぱく質減、炭水化物増が、体重増の原因になるようであった。

 

 外国では1杯しか食べられないところが、日本では2杯、3杯と食が進む。まして、あきたこまちの精米したての一番おいしいところを毎日食べているため、帰国して2カ月、瞬く間に4キロも太ってしまった私がそこにはいた。

 

 ニュージーランドで食べていたご飯って、どンだけのレベルだったんだろう。でも、あれが世界標準であった。

 

 その後、シンガポールに3週間滞在し、その間、瞬く間に2キロ痩せた。シンガポールのコメの味は世界標準だから、ご飯よりもおかずによるエネルギー摂取が増えたためだ。

 

 ということはだ。弊社が、リーズナブルな価格でおいしい日本米を、シンガポール在住の皆さんに食べていただく。やっぱり日本のお米はおいしいねーと、みんな1杯ずつおかわりを増やす。

 

 「近藤さんのせいで、最近太ってしまった」

 

と、ブーイングを浴びた時、私は悪役レスラーのように、耳に手をあてがって、恍惚の表情を示すべきなのか。

 

 「炭水化物は太るんですよ。日本米はおいしいから、ちょっと罪な奴ですよね。もっと太ってください。アジア人は西洋人に比べて痩せすぎですから、全然気にする必要ないですよ」

 

というべきなのか。

 

 日本人は喫煙率が高いのであるが、

 

 「たばこ1本(50セント)とご飯一膳は似たような値段ですから、おいしいご飯に費やした方が価値は高いですよ」

 

の方がいいかもしれない。

 

 駐在員の方で、

 

 「日本に帰ると、すぐ太ってしまう。ご飯がおいしいから、どんどん食べてしまう」

 

とは、私を含め、多くの方に共通する証言である。そのような、箸が止まらなくなる日本品質と価格のおコメを私はお届けしたいし、日本で太らず、どうせならシンガポールで太ってもらいたいと思っている…これってどうなんだろう?

 

 それよりも、

 

 「脳はエネルギーの30%を糖分から摂取するそうダスから、いい仕事をするためには、やっぱり日本のお米が一番ダス。弊社のあきたこまちを食べて幸せを感じ、さらに脳に良質なエネルギーを供給して2倍幸せでガス」

 

と、なぜか秋田弁と岩手弁が混じっているのであるが、これはあながち、的外れな回答ではあるまい。しかし、方言まるだしの方が、いかにも「産地から来ました」的な雰囲気が出る。

 

 ともあれ、シンガポールで頑張る駐在員の皆さんにとって、新鮮で美味しい日本米は、必要不可欠なエネルギー源になるはずである。