美味しいご飯の諸条件

 美味しいご飯になるためには、いくつか条件がある。

 

 まず、品種。例えば、日本米穀検定協会が定めるランクにおいては、なぜかは知らないが、滋賀県の日本晴という品種が基準のA´という評価になる。これより美味しいのがA、特に美味しいのが特A、日本晴以下がBやB´という評価。ただし、A未満のお米はまずスーパーで見ることがないと思う。

 

 特Aで多く見るのはコシヒカリだし、北海道ではゆめぴりか、ななつぼし、岩手や宮城ではひとめぼれといった品種が、特A品種である。産地によって生産条件が異なるため、例えば岩手県では南部のひとめぼれは特Aランクでも、中部・北部は日本晴並の評価になる。

 

 次に、炊き方。これは電子ジャーいかんともいえる。近年は5万円を超える高額なものがよく売れるということであるが、各メーカーとも本体よりも釜に大変なこだわりがあって、象印は「極め羽釜」という南部鉄器モデル、パナソニックは「ダイヤモンド釜」という熱をよく通す銅を使った釜、東芝は「鋳造かまど丸釜」という丸型かまどもの、タイガーは「本土鍋」なる土鍋チックなもの…と、それぞれ古来から日本の炊飯利用されてきた釜をモデルとした、殆ど職人技というべきものを開発している。これら特殊な窯を、高性能コンピューターで制御して炊き上げる仕組み。

 

 そして、最も大事なのは、保存と精米日。理想的な保存状態は気温15度、湿度70%以下といわれるが、玄米は15度以下で冬眠状態に入り、劣化がほぼ停止する。そして、精米後の精米は表面が酸化して急速に劣化が始まる。日本米の持つ甘みもどんどん失われ、コシヒカリでさえ、精米日かあら2週間を過ぎたあたりから、急にその甘みが失われてしまう。

 

 精米後もきちんと冷蔵庫で保管し、食べる都度精米し、ハイテクジャーで炊くのが、コメを最も美味しく食べる方法といえる。ハイテクジャーといえどなかなか壊れるものではないし、毎日食べるものなら5万円は高くないと思う。

 

 日本のスーパーでは、精米日から1カ月を越えた商品をまず見ることがない。一度に全て精米してしまわず、卸売業者が出荷の都度精米しているから、日本の日本米は、保存や鮮度の点ではあまり問題ないようだ。

 

 これがシンガポールに行くと話が全く異なり、日本米は精米日から10カ月以上過ぎたようなものさえ散見され、外国からのコメには精米日さえ印字されていないが、精米後輸出がほぼ100%であるため、ほぼすべての精米がかなり酸化した状態で、店頭に並べられていると推測される。

 

 食べる直前に精米。これは日本の米屋さんがやっていることで、日本では特別なことではない。しかし、シンガポールでは特別な意味を持つ。つまり、新鮮なお米(精米したて)が、シンガポールでは非常に手に入りにくいからこそ、日本ではあたりまえのコメが、大きな価値を持つ。

 

 日本品質を日本価格で。これが弊社のシンガポール事業のコンセプト。しかも、産地や年度といったブレンド一切なしの、単一年度、単一産地(単一農家)ゆえに、日本のスーパーで買うお米よりも、美味しい可能性は高いのである。

 

 実際、シンガポールでは水や炊飯器が異なるため、特Aあきたこまち、特Aひとめぼれといえど、そのポテンシャルを存分に発揮することが難しいかもしれないけれど。