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稲造米 出航 星国へ

リーファー(冷蔵)コンテナ編

 秋田港からの出港準備です。バンニング作業を行う、保税倉庫に来ております。

 

 秋田県、岩手県各方面から集荷された、あきたこまち、ひとめぼれの玄米が到着いたしました。

 こちらがリーファーコンテナ内部。ドライコンテナと異なり、弊社のチャーターコンテナになります。料金はかなり割高…ですが、世界一美味しいとされるレベルを、ベトナムや豪州米国らのお米と区別がつかなくなるほどに劣化させてまで、愛さえ感じるあきたこまちを輸出したくはないのです。

 

 秋田美人には、秋田美人のままで嫁に行ってほしい

 

 そう思うのが、本当の親心ではないでしょうか。ねえ、お父様がた。あきたこまちは、あきたこまちのままで、シンガポールの皆様に愛されるべきなんです。

 

 前面部に、調整用の装置がついております。設定はマイナス25℃からプラス25℃までだったと思います。米の場合、ほぼ常温の15℃から19℃くらいがちょうどいいみたいです。

 

 ただし、15℃は日本政府が備蓄米を何年も保存するような温度。15℃以下になると、玄米が完全に冬眠状態に入り、呼吸をほとんどしなくなるために、劣化速度も極端に遅くなります。

 

 何年も保存するわけではない、つまりここまでの温度にする必要はないので、シンガポールの定温倉庫に合わせた設定で輸出することにしました。環境の急激な変化は、おコメの品質にダメージを与えかねません。

 

 ちなみに、赤道付近では、ドライコンテナではコンテナ内部が70℃にもなるそうです。天井は目玉焼きを焼けるほど熱くなります。まさにサウナ状態で、食品をドライコンテナで日本からシンガポールへ輸出した場合、日本品質を維持することは絶対不可能でしょう。

 

 日本酒、米、その他食品、精密機械等々、多少輸送費が高いとはいえど、リーファーコンテナは日本品質を輸出する上で不可欠なものです。さもなければ、6倍の輸送費をかけて、1日のうちに空輸するかです。

 

 したがって、東南アジアやその他常夏の国で輸入食品を口にする場合、どのような輸送方法で輸入されてきたかを知ることが、その食品の品質を知る上で重要なポイントになるといえましょう。

 

 また、日本で外国製品を口にする場合も同じで、特にワインなどは、リーファーコンテナ輸入かどうかが、フランスの味を維持しているかどうかを分ける、最大のポイントなりそうです。

 

 酒の保存期間は100年超です。仏産ワインの場合、同じものなのにフランスと日本で全く異なった味をしている場合、輸出過程に大いに問題があったと疑ってみるべきでしょう。

 ともかく、30キロ袋入り玄米が秋田港から輸出されるのは、どうやら史上初めての様子。

 

 これまで、あきたこまちが海外輸出される場合、秋田で精米されたものがパッケージングされ、3週間かけてシンガポールに運ばれ、結局店頭に並ぶまでに1カ月近くかかっていました。

 

 精米後1カ月がコメの賞味期限なのに(おいしく食べられる期間)、これでは世界最高峰とされる日本米の味、まして自分が子供の頃から愛してやまないあきたこまちを楽しんでもらうことは、到底不可能ですよね。

 

 おまけに、秋田価格の2倍以上もするのでは、欲しくたって誰も買いません。「日本農産物の世界的普及」なんて、本当に絵にかいたモチに過ぎなくなってしまいます。

 

 日本では、あきたこまちはコシヒカリとともに国民的お米です。でも、シンガポールでは富裕層のお米というのでは、愛するあきたこまちが、あまねく皆様に愛されないではありませんか。

 

 まして、ドライコンテナで精米を輸出してしまっては、それは完全にシンガポールで別の物体に変質しています。同じ「秋田県産あきたこまち」というブランド銘を打つべきではないのです。

 

 だからこそ、リーファーコンテナで輸出し、現地精米をするという工程が、あきたこまちやひとめぼれの本当のよさを感じていただくためには、不可欠なのでありました。

 

 あきたこまちやひとめぼれは、コシヒカリよりも低価格な割に、食味で劣っているわけではありません。特A級のお米になると、「甘いのがいい」「粘り気は弱い方がいい」などなど、もはや好みの問題というほかはなくなってきます。

 

 ゆえに、世界的なチャンスがあるのは、新興米として台頭著しい北海道のゆめぴりかやななつぼし、そして伝統の新潟コシヒカリではなく、秋田県のあきたこまち、そして18年連続特A級である岩手県のひとめぼれであると、私は強く信じているのであります。 

 

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秋田港からシンガポールへ

  港近くの保税倉庫から、玄米を詰め込んだリーファーコンテナが移動していきます。

 

 秋田港は、ここから3キロ先です。

 港にて通関、積み込み待機中のコンテナ。通関後、荷物は内国貨物から外国貨物へと変わります。リーファーコンテナにはバッテリーが搭載されていないため、写真のように常に電源に接続されていなければなりません。

  ご覧のように、温度は18度前後になるように設定しております。

 

 この時の秋田の気温が18度くらい、コンテナ内も18度くらい、シンガポールの倉庫もそれくらいなので、ずーっと一定のひんやりとした温度が保たれます。

 

 あとは、リーファーコンテナが船上で故障しないことを祈るのみです。故障したが最後、室内温度は瞬く間にドライコンテナ同様の70℃近くのサウナ状態になり、我が愛しのあきたこまちは、ボイルされてまったく別のお米に変質してしまう。

 

 どうか秋田美人のまま、シンガポールにつきますように!

 

 あきたこまちは、ついに旅立ちの時を迎えるのでありました。

 この高さ30メートルのクレーンは、奥のもっと巨大なガントリークレーンが船に荷物を積載する定位置まで運ぶものです。右下が人ですが、近くで見ると、なにかブロントザウルスとかそんな生き物を見ている気持ちです。

  こちらが、コンテナを船に積み込むガントリークレーン。奥に見えるのが、コンテナ積み下ろし中のコンテナ船。釜山経由でシンガポールへ向かいます。

 

 下部が人ですが、黄色が子供に見える、約2倍くらい高いです。秋田には1台しかありませんが、確か、仙台港には6台、東京や横浜にはその倍以上設置されているようです。

 

 これが世界有数のコンテナ扱い高を誇る釜山、香港、シンガポールになると、さらに規模の大きなものになるとのこと。

 

 このような流れで、あきたこまちの玄米は、約2週間かけてシンガポールへと旅立ちます(釜山での待ち合わせやシンガポール通関で計1周間ほどかかります)。

 

 あきたこまちは、大海原を行きます。