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2020年4月16日

 

 天寿を全うするその瞬間まで、昆虫観察への興味が尽きなかった、ジャン・アンリ・ファーブル。

 「昆虫記」は50代から30年間にわたって書かれ続けた、全10巻の超大作。文体は早世した息子に語りかける風だが、内容は極めてハードな大人向け。

 昆虫生態を見つめることで、「生き物の生と死」という哲学へと昇華。文学的評価も高く、19世紀にはノーベル文学賞候補ともなった。

 昨年ノーベル賞を受賞した吉野さんは、小4の頃に読んだ「マイケル=ファラデー・ロウソクの科学」をきっかけとして、科学の道を志した。

 また、81年に同賞を受賞した福井謙一は、「ファーブル昆虫記」で科学に開眼した。

 人の一生は、子供時代に邂逅する本で決まる場合があるのだ。

 さて、生き物には必ず天敵がいる。アブラムシとテントウムシの関係。食物連鎖の中で食べて、食べられて、自然の中で役割を果たしつつ、世界は秩序を保っている。

 法則。節理。この神の作りたもう世界に、昆虫観察を通して、ファーブルは到達した。

 人間はどうだ。

 戦争や飢餓を克服した今、ウイルスこそまさに唯一の天敵なのではないか?

 「昆虫記」をきっかけとして、疫学に興味を持った少年が、きっといただろう。

 では、自然の摂理としてウイルスが人間に果たす役割とは、一体なんだ?

 そんな哲学的難問に直面しつつ、今まさにこの瞬間、COVID19と戦っている医師や研究者がいるのかもしれない。

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